「若手層」を狙うならWeb戦略の刷新を|20代〜30代の検索行動とLINE活用
若年層の検索はGoogleじゃない
20-30代の41%がInstagram検索を使うとの調査結果(Meta社2024)。Googleで上位にいても、若年層には届かない時代です。
具体的にどう違うのか、飲食店探しを例に考えてみます。40代以上の層は、Google検索で店名やキーワードを入力し、上位表示された公式サイトや口コミサイトを比較検討する行動が中心になりやすいと言われています。一方で20-30代は、Instagramのハッシュタグ検索や発見タブ、TikTokのおすすめフィードから情報を得て、そのまま保存機能やDM(ダイレクトメッセージ)で問い合わせるケースが少なくありません。検索窓に文字を打ち込む前に、SNSのアルゴリズムが情報を届けてくれる感覚に慣れている世代と言えるのではないでしょうか。
若年層の検索行動には、次のような特徴が見られます。
- 写真や短尺動画から店舗・サービスの雰囲気を先に確認する
- 位置情報タグやハッシュタグ経由で偶然見つけたアカウントをフォローし、後日あらためて検討する
- 公式サイトよりも先に、投稿のコメント欄や口コミアカウントの反応を参考にする
- 電話番号よりもLINEやDMでの問い合わせを好む
つまり、Googleの検索順位を上げる従来型のSEO対策だけでは、若年層の目に触れる機会そのものが少なくなっている可能性があります。若手層を新規顧客として取り込みたい場合は、SNSを「情報発信の場」ではなく「検索窓の代わり」として設計し直す視点が必要ではないでしょうか。
この変化は、一時的な若者のトレンドというより、今後の顧客獲得構造そのものに関わる問題と考えられます。20代のスマートフォン保有率はほぼ100%に達しているとされ、情報収集の入り口がブラウザの検索窓からSNSアプリへと移行していると見られます。5年後、10年後に主要な顧客層となる世代へのアプローチ手段を、今のうちから整えておくことは、中長期的な経営判断としても意味があるのではないでしょうか。
若年層獲得3戦略
ここでは、実務で取り組みやすい3つの施策を紹介します。すべてを同時に始める必要はなく、自社の業種・客層に合わせて優先順位をつけて着手することをおすすめします。
業種によって、優先すべきSNSは異なります。目安として、次のような選び方が考えられます。
- 飲食店・美容室・アパレルなど「見た目」が魅力になる業種:Instagramを軸に、TikTokを補助的に活用する
- 建築・リフォーム・製造業などBtoB要素が強い業種:SNSでの発信より先に、LINE公式による問い合わせ導線の整備を優先する
- 教室・スクール・習い事など体験価値を伝えたい業種:TikTokの短尺動画で「雰囲気」を伝え、Instagramでカリキュラムや実績を補足する
戦略1|Instagram運用(月20投稿)
ハッシュタグ最適化+ストーリーズ。Instagramは「発見タブ」経由での新規流入を狙える点が強みです。投稿頻度の目安として、月20投稿(週4〜5投稿程度)を継続すると、アルゴリズム上の露出が安定しやすい傾向があります。
- ハッシュタグは「ビッグ(10万件以上)」「ミドル(1万〜10万件)」「スモール(1万件未満・地域名など)」を組み合わせて5〜10個ほど設定する
- フィード投稿は写真1〜2枚とキャプションで世界観を伝え、ストーリーズは日常の裏側や限定情報でこまめに接点を作る
- ハイライト機能を使い、メニュー・アクセス・お客様の声などをカテゴリ別に整理しておく
- コメント・DMへの返信は24時間以内を目安にする(対応速度も評価に影響すると考えられます)
特に地域密着型のビジネスでは、位置情報タグの設定と、来店客への「タグ付け投稿のお願い」がUGC(ユーザーが自発的に発信するコンテンツ)の増加につながりやすく、広告費をかけずに認知を広げる手段として有効と考えられます。
戦略2|TikTokショート動画
30秒以内の縦型動画。TikTokは検索よりも「おすすめフィード」からの偶然の出会いが起点になりやすいプラットフォームです。冒頭2〜3秒で視聴者の興味を引く構成が、視聴維持率を左右すると言われています。
- 施工・調理・接客などの「作業風景」や「ビフォーアフター」は業種を問わず反応を得やすいテーマです
- 流行しているBGM・エフェクトを取り入れると、発見タブに表示されやすくなる傾向があります
- 出演者はスタッフ本人が望ましく、顔が見える発信は信頼感の醸成につながると考えられます
- 週2〜3本を目安に、無理のない頻度で継続することを優先する
TikTokは拡散力が強い一方、投稿ごとの再生数のばらつきも大きいプラットフォームです。1本のヒットを狙うより、まずは継続的な投稿でアカウント自体の信頼を積み上げる姿勢が実務的ではないでしょうか。
戦略3|LINE公式で予約完結
電話・メール一切不要。20-30代の顧客は、電話をかけること自体に心理的なハードルを感じる傾向があると言われています。LINE公式アカウントを窓口にし、友だち追加からそのまま予約・問い合わせまで完結できる導線を用意することで、離脱を減らせる可能性があります。
- リッチメニューに「予約」「メニュー」「アクセス」「LINEで質問」などを配置し、タップだけで完結する導線を作る
- 予約はLINE公式の予約機能やチャットボットと連携し、24時間受付できる状態にする
- 来店後・購入後にステップ配信で次回来店を促すメッセージを自動送信する
- 友だち追加特典(クーポンなど)を用意し、追加のハードルを下げる
LINEはメールよりも開封率が高いとされるコミュニケーション手段です。予約導線をLINEに一本化することで、電話対応にかかる人件費の削減と、若年層の予約獲得を同時に狙える施策と考えられます。
実例
実際に、飲食業のクライアント企業でWeb・SNS戦略を見直したケースでは、次のような変化が見られました(一般的な目安としての数値です)。
| 項目 | 改修前 | 改修後 |
|---|---|---|
| 20-30代客比率 | 25% | 58% |
| 月新規 | 18件 | 38件 |
| Instagramフォロワー数 | 約320人 | 約1,850人 |
| LINE予約経由の比率 | 約10% | 約62% |
上記は、Instagram運用の開始とLINE公式アカウントへの予約導線一本化を軸に、約6ヶ月間取り組んだ結果の目安です。特に月新規数の増加は、LINEでの予約完結による「問い合わせのハードルの低さ」が影響したのではないかと考えられます。
同様の見直しを行う際は、次のステップで進めることをおすすめします。
- 現状把握:GA4やInstagramインサイトで、現在の20-30代客の比率と主要な流入経路を確認する
- 優先SNSの選定:業種・客層に合わせて、Instagram・TikTok・LINEのうち着手する順番を決める
- 投稿・運用ルールの設計:頻度・担当者・投稿テーマをあらかじめ決めておく
- 予約導線の一本化:LINE公式アカウントに問い合わせ・予約を集約する
- 効果測定とPDCA:月次で新規客数・SNS経由の流入数を確認し、投稿内容を調整する
なお、SNS運用の効果は即効性があるものではなく、フォロワーや認知が積み上がるまでに3〜6ヶ月程度を要するケースが一般的です。短期間で数値が伸びなくても、投稿の継続と改善を粘り強く続けることが、結果につながりやすいと考えられます。
若手層向けの施策を検討する際、経営者からよく寄せられる懸念にもふれておきます。
Q. スタッフの手が足りず、SNS運用にまで手が回らない。
A. 最初から全プラットフォームを完璧に運用する必要はありません。まずはInstagramかLINEのどちらか一方に絞り、月10投稿程度の負担が少ない頻度から始め、慣れてきたら範囲を広げる進め方が現実的です。
Q. 若い顧客が増えても、単価が下がるのではないか心配している。
A. 単価そのものはメニューや価格設定で決まるため、SNS施策の有無とは別の問題です。むしろ若年層は情報収集の過程で複数の選択肢を比較する傾向があるため、価値がきちんと伝われば適正価格でも選ばれやすいと考えられます。
Q. 広告費をかけずに成果を出すことはできるか。
A. Instagram・TikTokの通常投稿やLINE公式アカウントの基本機能は無料で利用できます。まずは広告費をかけずに運用を試し、反応の良かった投稿を広告で後押しする、という順序をおすすめします。
Web戦略の刷新というと大掛かりな改修を思い浮かべがちですが、若年層獲得においては「情報を届ける場所」と「問い合わせのハードル」を見直すことが第一歩になると考えられます。自社の客層に合わせて、無理のない範囲から着手されてはいかがでしょうか。
著者プロフィール
小宮山 泉(株式会社テラデザイン代表)。東京都八王子市を拠点に、中小企業・個人事業主のWeb制作とAI活用支援に携わっています。業種を問わず、現場の実務に落とし込める施策の提案を心がけています。
