「経験のある人材を採用したいのに、応募が集まらない」「面接まで進んでも、辞退されてしまう」というご相談を、中小企業の採用担当者様から伺う機会が増えています。求人媒体を増やしたり、紹介会社を複数使ったりと、募集の間口を広げる対策に取り組まれている会社様も少なくありません。
それでも状況が変わらない場合、原因を給与や待遇の見直しに求める前に、一度確認していただきたい点があります。それは、自社が「成長できる会社」であることを、求職者に伝えられているかどうかです。
1.スキル人材は、なぜ「成長できるか」を気にするのか
即戦力採用を目指す中小企業様が増える一方で、応募してくる人材は「今の会社にいてもこれ以上伸びない」という危機感を抱えていることが少なくないと考えられます。転職理由の多くが、給与への不満以上に「成長の実感が持てない」という声であるとも言われています。
スキルを持った人材ほど、次の職場に求めるのは待遇そのものよりも、そのスキルをさらに伸ばせる環境ではないでしょうか。応募先を選ぶ段階で、すでに「ここで成長できるか」という視点が働いていると考えられます。
同じ業界・同じ職種の求人が複数並んでいる状況では、条件面の差はそれほど大きくないことも多いと考えられます。そうしたなかで最終的な応募先を決める基準になっているのが、「この会社に入ることで、自分の市場価値がどう変わりそうか」という将来を見据えた視点ではないでしょうか。
2.給与・待遇だけでは判断材料が足りない
求人票に記載できる情報は、給与・休日・勤務地といった条件面が中心になりがちです。しかし、これらの条件だけを比較して応募先を決める求職者は、実際には少ないのではないでしょうか。
条件面で近い水準の求人が複数あった場合、最終的な決め手になるのは「この会社に入ったら、どんな経験ができそうか」という将来像だと考えられます。求人票だけでは、そこまでの情報を伝えきれていない可能性があります。
給与テーブルや福利厚生を手厚くする取り組みも大切ですが、それだけでは他社との差別化が難しい場面も増えてきているのではないでしょうか。条件面の競争に加えて、成長環境という切り口で自社の魅力を伝えることが、これからより重要になってくると考えられます。
3.「成長できる会社」かどうかを、どこで確認しているのか
求職者は、応募や面接の前に、会社のホームページやSNS、口コミサイトなど複数の情報源から会社の実態を確認しようとします。具体的には、次のような点が見られていると考えられます。
- 研修制度や資格取得支援の有無が明記されているか
- 若手や中途入社の社員が、どのように活躍しているか
- 現場での裁量や、任される仕事の幅が伝わるか
- 上司や先輩からのフィードバックの仕組みがあるか
- 昇進・昇給のモデルケースが紹介されているか
これらが確認できない場合、実際には整っている制度であっても、「ない会社」として扱われてしまう可能性があります。求職者は限られた時間の中で複数の会社を比較しているため、情報が見つからない会社は、比較の候補から早い段階で外れてしまうことも考えられます。
4.研修・教育制度の情報が発信されているか
社内でOJTや勉強会を行っていても、それが社外に向けて発信されていなければ、求職者からは見えない制度と同じ扱いになってしまうと考えられます。
特にスキル人材は、入社後の学び直しやスキルアップの機会を重視する傾向があると言われています。研修制度・外部セミナーの参加支援・資格取得の補助といった情報は、採用ページやブログで具体的に紹介しておくことが望ましいのではないでしょうか。
「制度はあるが、社内向けの資料にしか記載していない」という会社様も少なくないと考えられます。せっかくの制度も、社外に向けて言語化して初めて、求職者にとっての判断材料になるのではないでしょうか。
5.社員のキャリアパスが見えるかどうか
「入社後、どのように成長していけるのか」が具体的にイメージできることも、応募の決め手になり得ます。
中途入社の社員がどのような経緯でリーダー職に就いたか、未経験からどのようにスキルを身につけたかといった実例は、抽象的な制度紹介よりも説得力を持ちやすいと考えられます。社員インタビューという形でキャリアの歩みを発信している会社は、求職者にとって「成長できる会社」という印象を持たれやすいのではないでしょうか。
入社1年目・3年目・5年目といった時期ごとの声を紹介できれば、求職者は自分がその会社で働く姿をより具体的に想像しやすくなると考えられます。反対に、経営者や代表者の言葉だけで採用ページが構成されている場合、現場で働く社員の実感が伝わりにくいという面もあるのではないでしょうか。
6.Googleビジネスプロフィールの口コミにも手がかりがある
求職者が確認しているのは、自社が発信する情報だけではありません。Googleビジネスプロフィールに寄せられた口コミや、そこに写る従業員の様子も、会社の実態を推測する材料になっていると考えられます。
「風通しが良さそう」「若手が活躍している様子が伝わる」といった口コミがあれば、それは会社側の発信よりも信頼される情報として受け取られる可能性があります。反対に、口コミが極端に少ない、あるいは対応が事務的な返信ばかりといった状態も、判断材料の一つになっているのではないでしょうか。
自社が発信する情報が「良いことしか書いていない」と受け取られやすい一方、第三者の投稿である口コミは、率直な評価として比較検討の材料にされやすいと考えられます。良い口コミへの返信一つとっても、丁寧な対応をしている会社かどうかを推し量る手がかりになっているのかもしれません。
7.発信していないだけで、機会を逃しているかもしれません
ここまで見てきた内容を振り返ると、「成長できる環境がない」のではなく、「成長できる環境が伝わっていない」だけというケースが、実は多いのではないかと考えられます。
研修制度も、キャリアパスの実例も、現場の裁量も、社内には確かに存在している。それにもかかわらず、ホームページや採用ページ、Googleビジネスプロフィールといった、求職者が実際に確認する場所に情報がなければ、比較検討の土俵にすら乗れていない可能性があります。
採用条件を見直したり、紹介料の高い媒体を追加したりする前に、まずは「自社の成長環境が、求職者から見える形になっているか」を確認してみる価値はあるのではないでしょうか。発信を整えるだけで状況が変わる可能性も、十分に考えられます。
8.情報発信を整える、小さな一歩
すべてを一度に整える必要はないと考えます。まずは、社員インタビューを1本掲載する、研修制度の紹介ページを追加する、Googleビジネスプロフィールの口コミに返信を始めるといった、小さな一歩からで十分ではないでしょうか。
そうした積み重ねが、求職者に「この会社なら成長できそうだ」と感じてもらうきっかけになり、結果として採用のミスマッチを減らすことにもつながると考えられます。
自社だけで発信内容を整理するのが難しい場合は、外部の視点を借りながら、求職者に伝わる形に言語化していくという進め方も一つの方法ではないでしょうか。
まとめ
スキル人材が応募先を選ぶとき、給与や待遇と同じくらい重視しているのは「この会社で成長できるか」という視点かもしれません。研修制度・キャリアパス・口コミといった情報が発信されていなければ、実際には整っている魅力も、求職者には届かない可能性があります。
応募が思うように集まらない、内定辞退が続くといった悩みの背景には、条件面ではなく発信面の課題が隠れていることも考えられます。自社の採用ページやGoogleビジネスプロフィールを、スキル人材の目線で一度見直してみてはいかがでしょうか。
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