結論:中小企業のAI導入は、外注と内製のどちらかを「規模」で決めるのではなく、「体制」で決めるのがよいと考えます。専任の担当者や学習に使える時間があれば内製、なければ外部の伴走支援、迷う場合は両者を組み合わせるハイブリッドが現実的な選択肢ではないでしょうか。

この記事では、内製に向く会社・外注に向く会社の特徴、費用の見方、ハイブリッドという進め方、判断に迷ったときのチェックポイントを順にご紹介します。「自社はどちらに近いのか」を整理する材料としてお読みください。

1.「内製すべき」という思い込みが遠回りになることもある

「外部に頼るのは費用がかかるから、まずは自社でやってみよう」と考える経営者様は少なくありません。この考え方自体は自然なものですが、専任の担当者がいないまま手探りで進めると、かえって時間がかかってしまうケースも見受けられます。

AIは、ツールを開いて質問を入力するだけなら誰でも始められます。一方で、「どの業務に使うのか」「どこまで任せてよいのか」「社内でどうルールを決めるのか」といった設計は、ツールの使い方とは別の判断が必要です。この設計が曖昧なまま始めると、数人が個別に試すだけで終わり、会社としての成果につながりにくい傾向があると考えます。

もちろん、内製が悪いということではありません。大切なのは「内製か外注か」という手段の前に、自社にその体制があるかどうかを冷静に見ることです。体制が整っていれば内製は有力な選択肢ですし、整っていなければ別の進め方を検討する余地があります。

2.内製に向いている会社の特徴

内製が向いているのは、IT・デジタルツールに比較的慣れた社員がいる、あるいは経営者自身が学習に時間を割ける、という会社です。時間をかけてでも社内にノウハウを蓄積したいという方針であれば、内製から始める選択肢も十分にあり得ます。

内製に向いている会社には、一般的に次のような特徴があると考えます。

内製のよい点は、社内に知見が蓄積し、業務の変化に合わせて自社で調整できるようになることです。反対に、担当者の異動や退職で知見が途切れやすい、情報の更新を追い続ける負担がある、といった点には注意が必要だと考えます。

3.外注(伴走支援)に向いている会社の特徴

一方で、専任のIT担当者がおらず、経営者が日々の業務に追われている会社では、外部の伴走支援を活用した方が、結果的に早く成果につながることが多いと考えます。何を優先して取り組むべきかを一緒に整理してもらえることは、特に初期段階で大きな助けになります。

外注に向いている会社の特徴としては、次のような例が挙げられます。

なお、外注といっても、すべてを丸投げするという意味ではありません。目的や業務の実情を一番よく知っているのは社内の方々です。外部の支援者はあくまで整理・設計・つまずきの解消を一緒に行う存在であり、社内からの情報提供や意思決定が欠かせないと考えます。

外部に相談する前に準備しておくとよいこと

伴走支援を受ける場合でも、事前に簡単な整理をしておくと、限られた時間を有効に使えると考えます。たとえば、日々の業務の中で「時間がかかっている作業」「毎回同じような文章を書いている作業」「担当者が限られていて引き継ぎが難しい作業」を書き出しておく方法があります。完璧な資料は必要ありません。箇条書きのメモ程度でも、課題の見当をつける材料になります。

あわせて、予算の目安や、いつごろまでに形にしたいかといった期間の希望も、決まっている範囲でお伝えいただくと、進め方の相談がしやすくなるのではないでしょうか。

4.費用だけで比較すると見誤りやすい理由

「外注は費用がかかる」というイメージから内製を選ぶ会社もありますが、手探りで進める時間そのものにもコストがかかっているという視点も必要です。試行錯誤に費やす経営者や社員の時間を考えると、外部の知見を借りた方が総合的に見て効率的な場合もあります。

比較の際は、請求書に載る費用だけでなく、次のような「見えにくい費用」も合わせて考えてみてはいかがでしょうか。

項目内製の場合外注(伴走支援)の場合
目に見える費用ツール利用料、書籍・研修費など支援費用、ツール利用料
時間の費用担当者の学習・試行錯誤の時間が大きい打ち合わせや情報提供の時間が中心
成果までの目安体制により幅が出やすい優先順位の整理が早く進みやすい
ノウハウの蓄積社内に直接たまる意識して社内に移す工夫が必要
主なリスク属人化、途中での停滞丸投げによる社内の理解不足

この表のとおり、どちらにも長所と注意点があります。費用の総額だけで決めるのではなく、「自社の誰の時間を、どれだけ使えるのか」を含めて比べることが、見誤りを減らすことにつながると考えます。

5.ハイブリッドという選択肢

外注か内製かの二択ではなく、最初の設計や仕組みづくりは外部に伴走してもらい、日々の運用は社内で行うというハイブリッドな進め方も有効です。立ち上げ期の負担を減らしながら、徐々に社内にノウハウを移していくことができます。

ハイブリッドの進め方の一例を、段階に分けて整理します。

  1. 目的と対象業務を決める(外部と一緒に整理する)
  2. 小さな範囲で試し、使い方のルールと手順書をつくる(外部の支援を受けながら)
  3. 社内の担当者が、手順書に沿って日々の運用を行う
  4. 慣れてきた部分から、支援の頻度を減らしていく

この進め方であれば、「最初のつまずき」を外部の力で乗り越えつつ、「定着後の運用」は社内で完結させることができます。支援を受けている間に、手順やルールを文書として残しておくと、担当者が替わっても引き継ぎやすくなると考えます。

社内に移すときの工夫

ハイブリッドで大切なのは、支援を受けている期間のうちに、社内で再現できる状態をつくることだと考えます。具体的には、よく使う指示文のひな形、確認の手順、使ってよい情報と使ってはいけない情報の区分などを、簡単な文書にまとめておく方法があります。担当者が一人に偏らないよう、複数人で試しておくことも、属人化を防ぐうえで役立ちます。

6.判断に迷ったときのチェックポイント

判断に迷った場合は、以下の点を確認してみることをおすすめします。

これらを整理することで、自社に合った進め方が見えてくるのではないでしょうか。さらに、次の2点も合わせて確認すると、判断がしやすくなると考えます。

目的が具体的であれば、内製でも小さく始めやすくなります。逆に、目的がまだ漠然としている段階では、外部と一緒に整理するところから始める方が、遠回りを避けやすいのではないでしょうか。最初の一歩の例としては、議事録作成から始めるAI導入のように、効果を実感しやすい業務を選ぶ方法があります。

7.どちらを選んでも「小さく始める」ことは共通

外注であっても内製であっても、いきなり全社的な取り組みにせず、小さな範囲から始めるという点は共通しています。まずは一つの業務から試し、効果を確認しながら広げていくことが、結果的に遠回りをしない進め方だと考えます。

小さく始める際の目安として、次のような条件を満たす業務が向いていると考えます。

また、AI導入がうまく進まないケースには一定の傾向があります。つまずきやすいポイントはAI導入でよくある失敗パターンで、費用面の見通しについてはAI導入の費用感の記事でも触れています。外注か内製かを決める前に、あわせて確認しておくと判断の助けになるのではないでしょうか。

よくあるご質問

Q. 従業員が数名の小さな会社でも、外注を検討してよいのでしょうか。

A. 会社の規模にかかわらず、検討してよいと考えます。むしろ人数が少ない会社ほど、専任の担当者を置きにくく、経営者自身が学習と実務を兼ねることになりがちです。そのため、最初の設計だけ外部に伴走してもらい、運用は社内で行うハイブリッドな進め方が合う場合もあります。

Q. 内製で始めて、途中から外注に切り替えることはできますか。

A. 可能です。まず社内で小さく試し、行き詰まった部分だけ外部に相談するという進め方もあります。その際、これまで試した内容や使ったプロンプト(AIへの指示文)、うまくいかなかった点を記録しておくと、相談がスムーズに進みやすくなると考えます。

Q. 外注する場合、何から相談すればよいのでしょうか。

A. 「AIで何を解決したいのか」が完全に決まっていなくても、相談は可能です。現在の業務で時間がかかっていること、人手が足りない作業などを書き出していただくと、優先順位の整理が進みやすくなります。テラデザインでも、初回60分の無料相談で状況をうかがっています。

まとめ

外注と内製、どちらが正解というものではなく、自社の体制や状況に合わせて選ぶことが重要です。判断に迷う場合は、まず外部に相談しながら方向性を整理することも一つの方法ではないでしょうか。

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