AIによって、Web制作の世界が大きく変わり始めています。

文章を書く。画像を作る。デザイン案を出す。HTMLやCSSを書く。WordPressを構築する。簡単なシステムを開発する。これまでWeb制作会社が数日、数週間かけて行っていた仕事の多くを、AIが数分から数時間で処理できるようになりました。

2026年にはAI搭載のWebサイトビルダーもかなり実用的になり、専門知識が少ない人でも短時間でWebサイトを立ち上げられる環境が整っています。Web制作会社側でもAI導入は進んでおり、WP Engineの2026年調査では、63%のWebエージェンシーがAIツールやプラットフォームへ投資し、72%が開発・デザインの進め方を変更したと回答しています。

つまり、「Webサイトを作れること」そのものは、これから急速に価値が下がっていく。これは避けられない変化だと考えます。

しかし、Web制作会社そのものが不要になるとは考えていません。むしろAIによって、「何を作るべきかを考えられる会社」の価値は、以前より大きくなる。そう考えています。

1.「作る」だけでは価格競争から逃げられない

これまでWeb制作会社の仕事は、企画→構成→デザイン→コーディング→公開という工程が中心で、特に工数がかかるデザインやコーディングを基準に「10ページだから○○万円」「LP1ページ○○万円」と価格を設定するのが一般的でした。

ところがAIによって、この前提が崩れます。10ページ作ること自体が10倍大変とは限らなくなり、初稿を作る時間も大幅に短縮できます。顧客から「AIを使えばもっと早くできますよね?」「自分たちでも作れるのでは?」と聞かれる場面は増えていくでしょう。「制作工数」を価値として売り続けると、最終的には価格競争になります。だからこそ、Web制作会社は売るものを変える必要があります。

2.売るべきものは「Webサイト」ではなく「成果」

たとえば工務店から「ホームページをリニューアルしたい」という相談を受けたとします。従来なら「何ページ必要ですか?」と聞いていたかもしれませんが、AI時代にはその一歩前——なぜリニューアルしたいのか、問い合わせを増やしたいのか、採用を強化したいのか——を掘り下げる必要があります。

「注文住宅の問い合わせを増やしたい」という目的なら、施工事例の見せ方、お客様インタビュー、FAQ整備、Instagram改善、Googleビジネスプロフィール強化、LINE公式アカウントへの導線など、ホームページ以外の打ち手も見えてきます。ここまで考えて初めて「成果につながるWeb制作」になります。つまり、Web制作を売るのではなく、経営課題の解決手段としてWebを使う。これが重要になります。

3.Web制作会社は「制作業」から「プロデュース業」へ

これから強いWeb制作会社は、「プロデューサー型」になると考えています。自分たちですべてを制作する必要はありません。AIも使う、カメラマンも使う、デザイナーも使う、エンジニアも使う、必要なら外部パートナーも使う。重要なのは、「この会社の課題を解決するには、何を組み合わせればいいのか」を考えられることです。

場合によっては「今はホームページをリニューアルしなくていいです。それよりGoogleマップとInstagramを改善しましょう」という提案になるかもしれません。この判断ができる会社は強い。AIは「作って」と言われたものを作ることは得意ですが、経営者と話をして、本当の課題を見つけ、優先順位を決め、実行まで責任を持つことには、まだ人間の介在価値が大きいからです。

Web制作会社がAI・撮影・SNS・分析・資料作成を束ねて事業者を支えるイメージ図

Web制作会社が複数の専門機能を束ねて事業を支えるイメージ

4.AIを敵ではなく「社員」として使う

AI時代に生き残るために重要なのは、AIと競争しないことです。競合調査・市場調査・SEO調査・サイト構成・ワイヤーフレーム・コピーライティング・画像生成・動画生成・コーディング・議事録・提案書・営業メール・アクセス解析・改善案。これらにAIを入れていくと、これまで5人必要だった仕事を2〜3人で回せるようになる可能性があります。

ただし、そこで単純に価格を半分にする必要はありません。顧客が買っているものが「投入時間」ではなく売上、問い合わせ、採用、ブランド、業務効率といった成果なのであれば、価格は投入時間だけで決める必要がなくなるからです。AIによって生産性を上げ、その利益を次の提案や改善に再投資する。この考え方が重要になります。

5.「納品して終わり」のビジネスモデルをやめる

Webサイトは完成品ではありません。公開後、どのページが見られているのか、どこで離脱しているのか、どの問い合わせが売上につながっているのか、AI検索からどう見つけられているのかを継続的に見ながら改善する必要があります。Google検索だけでなく、AIによる回答・推薦を通じて企業やサービスを知る場面が増えているため、人間だけでなくAIにも理解してもらいやすい情報設計が求められるようになっています。

これからは、制作→納品ではなく、調査→戦略→制作→運用→分析→改善までを一つのサービスとして提供する会社が強くなるでしょう。

6.「Web制作会社」という名前すら変わるかもしれない

Web制作+AI導入+マーケティング+営業支援+SNS+動画+写真+広告+業務改善まで提供する会社が増えていくと、顧客から見れば「Web制作会社に頼んでいる」というより「事業を一緒に伸ばしてくれる外部チームに頼んでいる」という感覚になります。マーケティング担当・Web担当・広報担当・エンジニアを社内に配置しづらい従業員5〜30人程度の会社にとって、「社外にいるWeb・AI・マーケティング担当」というポジションには大きな可能性があります。

7.AI時代ほど「現場に行く会社」が強くなる

AIが普及すると、インターネット上の情報を加工する仕事は簡単になります。逆に価値が上がるのは、その会社にしかない情報です。社長へのインタビュー、社員へのインタビュー、お客様の声、工場、店舗、施工現場、職人の技術、会社の歴史——こうした「一次情報」はAIだけでは作れません。だからこそWeb制作会社はクライアントの現場に入り込むことが重要になります。現場から集めた情報を、AIによって記事・動画・SNS・Webページ・FAQ・営業資料・採用コンテンツなどへ展開する。これは非常に強いサービスになります。

8.「AIを導入したけれど成果が出ない会社」を支援する

ChatGPTは契約した、社員も使っている、でも「結局、売上にはどうつながるの?」という会社は少なくありません。2026年にペライチが行った調査でも、生成AIを継続利用している中小・個人事業者の36.5%がWebページの公開・更新にはAIを活用できていませんでした。AIを使えることと、事業に実装できることの間にはまだ大きなギャップがあります。

ここにWeb制作会社の新しい役割があります。AIの使い方を教えるだけでなく、「御社の場合、この業務をAI化しましょう」というところまで実装する。つまり、Web制作会社がAI/DX支援会社になる。これはかなり自然な進化だと考えています。

9.これから価値が下がる仕事、上がる仕事

価値が下がりやすいのは、単純なコーディング・テンプレート中心のWeb制作・指示通りのバナー制作・画像の量産といった「指示されたものを作る仕事」です。一方、価値が上がるのは、経営課題の整理・事業戦略・ブランド設計・顧客理解・企画・一次情報の収集・AI導入設計・データ分析・プロジェクトマネジメントといった、「何をやるべきかを決める仕事」です。AIによって「HOW」の価格が下がり、「WHAT」と「WHY」の価値が上がる、と考えると分かりやすいでしょう。

単純作業の価値が下がり、経営課題を考える仕事の価値が上がっていくイメージ図

「HOW」の価値が下がり、「WHAT」「WHY」の価値が上がっていくイメージ

10.小さなWeb制作会社には、むしろチャンスがある

AIによって、小さな会社でも以前なら10人必要だった制作能力を持てるようになります。一人のディレクターがAIリサーチャー・AIコピーライター・AIデザイナー・AIエンジニア・AIマーケターを使いながら仕事を進め、必要なところだけ専門家と組む。重要なのは人数ではなく「顧客の課題をどこまで深く理解しているか」です。地域を知っている、業界を知っている、社長を知っている、会社の歴史を知っている——この情報量は、大手企業やAIには簡単に真似できません。地域の中小企業と長く付き合ってきたWeb制作会社には大きなチャンスがあります。

Web制作会社が生き残る10の方法

これからのWeb制作会社に必要な変化をまとめると、次の10個になります。

  1. 「ホームページ制作」を売らない
  2. 顧客の経営課題から考える
  3. AIを制作工程に徹底的に導入する
  4. 制作時間ではなく成果に価格をつける
  5. 納品型から継続支援型へ移行する
  6. Web+AI+マーケティングまで支援する
  7. クライアントの現場に入り一次情報を集める
  8. AIを使うだけでなく顧客企業へのAI実装を支援する
  9. 「作る人」ではなく「何を作るか決める人」になる
  10. 顧客の外部Web・AI・マーケティング部門になる

最後に

AIによってWeb制作会社がなくなる。そうは思っていません。なくなっていくのは、「言われたホームページを、言われた通りに作るだけの会社」ではないでしょうか。

会社のことを理解してくれる。社長と一緒に考えてくれる。新しいアイデアを持ってきてくれる。AIを使って素早く形にしてくれる。Webも動画もSNSも営業も横断して考えてくれる。数字を見て改善してくれる。そんな会社の価値は、むしろ高くなると考えています。

これまでWeb制作会社は「Webサイトを作る会社」でした。これからは「AIとクリエイティブを使って、企業の事業を前に進める会社」になる。Webサイトは商品ではなく、そのための手段の一つになります。AIによってWeb制作の仕事が終わるのではありません。Web制作会社が、次の仕事へ進むタイミングが来たのだと思います。

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