「求人票の内容には自信があるのに、なぜか応募が集まらない」というご相談をいただくことがあります。給与や待遇を見直しても応募数が変わらない場合、原因は求人票の外側にあるのかもしれません。求職者が会社を知る手がかりは、求人票だけではなくなっているためです。特に採用市場が売り手優位と言われる今、求職者は複数の情報源を見比べたうえで応募先を絞り込んでいると考えられます。
1.求人票だけを出しても、応募が来ない理由
求人票に書かれているのは、給与・勤務時間・仕事内容といった条件面が中心です。これらはもちろん大切な情報ですが、求職者が最終的に応募するかどうかを決める材料としては、条件面だけでは足りないと考えられます。
同じような条件の求人が並んでいるとき、求職者は「この会社で働く自分」を想像できるかどうかで比較しています。その想像を助ける情報が、求人票の外側にどれだけあるかが差になっているのではないでしょうか。求人媒体の担当者を替えたり、掲載期間を延ばしたりしても改善しない場合、見直すべきは掲載先そのものではなく、会社の情報発信量かもしれません。
2.求職者が採用条件より先に見ているもの
多くの求職者は、求人票を見たあと、まず会社名で検索をかけます。そこで表示されるのは、ホームページだけでなく、Googleビジネスプロフィール(GBP)の情報や口コミ、そしてSNSアカウントです。
この検索結果全体が、会社の第一印象を作っていると言えます。条件が良い求人であっても、検索結果に出てくる情報が乏しかったり、更新が止まっていたりすると、応募の一歩手前で見送られてしまう可能性があります。採用担当者が求人票の文面を磨き込んでいる一方で、検索結果に映る会社の姿はそのままになっている、というケースも少なくないのではないでしょうか。
3.SNSの更新が止まっている会社に持たれる印象
SNSアカウントはあるものの、最後の投稿が1年以上前、というケースは少なくありません。こうした状態を見た求職者は、「今、この会社で何が起きているのか分からない」という不安を感じやすいと考えられます。
特に若手の求職者にとって、SNSは会社の「今」を確認する場所になっています。更新が止まっていること自体が、「発信する余裕がない会社」「変化の少ない会社」という印象につながってしまうかもしれません。アカウントを作っただけで放置してしまっている場合、かえって何も発信していない状態より不安を与えてしまうことも考えられます。
4.ホームページ・GBP・口コミ・SNSは別々ではなく一枚の絵
ホームページ、GBP、口コミ、SNS。これらは別々のツールに見えますが、求職者から見れば一つの会社を映す一枚の絵として受け取られています。
ホームページで事業内容を確認し、GBPで口コミや写真を見て、SNSで日々の雰囲気を知る。この一連の流れのどこかが欠けていたり、情報が古かったりすると、絵の一部が欠けたまま応募の判断をされることになります。どれか一つを整えれば十分ということではなく、全体として発信されているかどうかが見られていると考えられます。ホームページだけを立派に作っても、GBPの口コミが放置されていたり、SNSの発信が止まっていたりすれば、そこで受ける印象にちぐはぐさが生まれてしまうと考えられます。
5.「発信しても意味がない」という思い込み
「SNSを頑張っても、フォロワーが少なければ意味がないのでは」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、採用における発信の目的は、フォロワー数を増やすことだけではないと考えます。
会社名で検索した求職者が、その場で「動きのある会社だ」と感じられること自体に意味があります。フォロワーが少なくても、直近の投稿があり、現場の様子が伝わる内容であれば、検索してきた一人の求職者に対する説得力は十分に果たせているのではないでしょうか。不特定多数に届けるための発信と、応募を検討している一人に向けた発信では、そもそも目的が異なると捉えたほうが実態に近いかもしれません。
6.見ているのは応募者本人だけではない
もう一つ見落とされがちなのが、会社の情報を確認しているのは、応募者本人だけとは限らないという点です。
新卒・第二新卒の採用では、家族や友人が一緒に会社を調べるケースも少なくないと考えられます。本人がSNSの投稿を見て好印象を持っても、周囲の人が「情報がほとんど出てこない会社」だと感じれば、それが応募や入社の判断に影響することもあり得ます。継続的な発信は、本人だけでなく、その周囲の方に安心感を持ってもらうことにもつながると考えられます。内定を承諾するかどうかの最終段階で、家族に反対されて辞退につながってしまう、という話も現場ではしばしば耳にします。
7.何から発信を始めればいいのか
いきなりSNSを本格的に運用しようとすると、続かずに止まってしまうことも多いようです。まずは、次のような小さな発信から始めてみることをおすすめします。
- 現場の様子や日々の出来事を、写真1枚と短い文章で投稿する
- GBPに届いた口コミに、一件ずつ返信する
- ホームページのお知らせ欄を月に一度は更新する
- 採用ページに、社員の声や一日の流れを追加する
- 投稿する曜日や頻度をあらかじめ決めて、無理なく続けられる形にする
完璧な内容より、継続していること自体が求職者への安心材料になると考えられます。担当者一人がすべてを抱え込むのではなく、月に数回で構わないので、複数人で分担する体制を作っておくと続けやすくなると考えられます。
8.発信を続けることで採用は変わっていく
発信を始めてすぐに応募数が増える、というものではないかもしれません。ただ、会社名で検索したときに「動きのある会社」だと伝わる状態を作っておくことは、中長期的に見て採用の入り口を広げることにつながると考えられます。
求人票の条件を見直す前に、一度、自社の名前を検索してみることをおすすめします。そこに映っている情報が、今の求職者に伝えたいことと一致しているか、確認する価値があるのではないでしょうか。発信を続けている会社ほど、応募者からの理解度が高く、面接での認識のずれが少ないという声も聞かれます。
まとめ
中小企業の採用難は、必ずしも条件面だけが原因とは限りません。求職者はホームページ・GBP・口コミ・SNSを合わせて会社を判断しており、その中でも更新の止まった発信は「変化の少ない会社」という誤解を生みやすいと考えられます。また、それを見ているのは応募者本人だけでなく、周囲の家族や友人であることも少なくありません。求人票の見直しと同じくらい、日々の発信を整えることにも目を向ける価値があるのではないでしょうか。まずは小さな発信から、自社の「今」を継続的に伝えることから始めてみてはいかがでしょうか。
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